水温の異常上昇ということで
VTRが入庫してきました。
http://www.honda.co.jp/motor-lineup/vtr/
ファンスイッチが壊れてファンが作動しないことによる異常上昇。
ま、これが5割くらい。
次に冷却系等の配線不良これが2割。
クーラントのリザーブタンクが空っぽになり、
エンジンストップ後の冷間時の熱収縮時にエアーが混入。
これが2割。
あとは・・・
シリンダーガヘッドスケット抜けによる排ガスの混入。
ラジエターキャップのバキュームバルブの不良または通路の不良。
リザーバータンクへの通路の不良。
などがあります。
今回はシリンダーヘッドガスケットの不良で
排ガスがちょっとづつウォータージャケット部に混入し
永遠にエア抜きが出来ず、クーラントが水温センサーより
下がってくるとインジケーターが異常上昇する。
というものでした。
フロント側のシリンダーヘッドは
車上整備で外せるのですが、
リア側はエンジン脱着したいとガスケットの交換ができません。
一か八かでフロントを車上で分解してもいいのですが、
リアシリンダーヘッドガスケットが原因の可能性がありますので、
確認のために両方開けます。
お客さん曰く
「VTRのエンジンを下ろすのはすっげー大変」だそうです。
ドゥカティーなんかはエンジン下ろそうとすると、
車体が自立しなくなりますので、きっとVTRもそうなのかなぁ
だとしたら「吊るぞう君」なんかで車体を吊らなければなりません。。。
ま、最悪そうであっても単管パイプでやぐらを組めばいいです。
エンジン下ろす前に最終点検で、
シリンダーヘッドガスケット以外の可能性を
あらためてつぶしていきます。
エンジン下ろしておいて実は車上で直せる整備だった、
なんてなったらいやですからね。
最終点検後エンジン脱着にかかります。
結構あっさりエンジンが下りました。
車体も自立しているし、比較的簡単でした。
ああ、良かった。
↑これがフロント側のシリンダーヘッド部
黒く残ったカーボンに注目してください。
↑そしてこっちがリア側のシリンダーヘッド
こちらにはカーボン付着が均等でガスケットによって、
ウォータージャケット部と燃焼室が隔離されていたことがわかります。
上の写真と比べると一目瞭然ですね。
ここから排ガスが少しづつウォータージェケッと部に混入し、
永遠にエア抜きが出来なかったんですね。
走行50000kmを超えていましたし、
こうゆうことも十分にありえます。
ところでVTRのエンジンは
実にいろいろなバイクに使われています。
VTR
Vツイン・マグナ
ゼルビス
VT250F
VTZ
などなど、
初代VTから始まったこのエンジン、実に良く出来ています。
VT系のエンジンで調子が悪いのは余りありません。
っというか、なおせばきちっと直るものが多いです。
たぶん、シリンダー部の精度に関係があるんじゃないかな、
と思います。
V型のエンジンの多くが、
クランクケースとシリンダーが一体のものが多いですが、
通常のエンジンは
クランクケース
↓
シリンダー
↓
シリンダーヘッド
↓
シリンダーヘッドカバー
と4ピース構造になっています。
VTRのようにクランクケースとシリンダーが一体だと
3ピース構造となり、精度が出しやすいのでしょう。
特にシリンダー部は
1/100mm単位の精度が出ていないといけないので、
クランクケースとシリンダーが分解できるものよりも
一体のほうがズレが少ない。
ピストンリング交換などはクランクを割らないといけませんが、
ま、この辺は一長一短あるのでしょう。
メンテナンスサイクルは短いが整備が簡単なバイク。
メンテナンスサイクルが長いが整備が面倒なバイク。
開発や設計を担っている技術者は
いつもこのバランスと戦っていることでしょう。
いずれにしてもこの辺の絶妙なバランスの上に
市販車が出来上がっているんですね。
一番いいのは
メンテナンスサイクルが長く整備も簡単なバイク!ですかね!
では!
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