1998年夏、
標高4000mのチベット平原を
ジープに乗って移動していると、
まるで月の上を走っている感覚に襲われる。
草木の全くない荒涼とした大地に
ジープが巻き上げる砂埃だけが
やけに青い藍色の空へモクモクと立ち上がっていった。
「空が近い」
わずかに残った高山病でまだ頭が痛かった。
ネパールと中国の国境の町ダムからヒマラヤを超え
ジープに揺られること丸2日。、
ようや私はくチベット第2の都市シガツェにたどり着いた。
シガツェはチベット仏教でダライラマに次ぐ
高位のパンチョンラマが住む大きな街。
街の中央にはタシルンポ寺が大きくそびえ立ち、
念仏の書かれたマニ石がいたるところに積み上げられていた。
多くの熱心な信者が五体投地でお祈りをしている。
ネパール仏教では
輪廻転生という考えがあり、
ダライラマは現在14世。
パンチョンラマは11世と
何代にも渡って、次のラマが生まれ変わりとして世に現れ
輪廻転生していくとされています。
ダライラマ14世は
文化大革命時に中国がチベットを制圧したのを期に
インドへ亡命しています。
しかし第2の高位であるパンチョンラマ10世は
チベットに残りました。
パンチョンラマ10世は
中国政府のチベット統治策への批判を展開しましたが、
批判を展開した直後に急死しています。
10世の死後、11世探索にダライラマが立ち上がり
ゲンドゥン・チューキ・ニマという
6歳の少年を転生者として認定しましたが、
中国政府はこれを拒否。
探索委員会のメンバーは逮捕され、
厳しい処分を受けたようです。
その後中国政府は同じ6歳の別の少年を
パンチョンラマ11世として認定。
現在タシルンポ寺に住んでいるパンチョンラマは
中国政府が1990年に認定したパンチョンラマとなります。
ダライラマ側から認定されていたニマ少年はその後行方不明に・・・
中国政府による誘拐がささやかれましたが中国政府はこれを否定。
しかし後に「保護」しているという発表をしています。
ダライラマ側が認定したパンチョンラマ11世と
中国側が認定したパンチョンラマ11世が
2人いると言う異常事態が現在も続いています。
しかし、今もってニマ少年の消息は不明のままです。
つい先日新しく中国大使に就任した西宮伸一さんが
就任直後に路上に倒れ、意識不明のまま入院となりましたが、
本日11時13分、東京都内の病院でお亡くなりになったそうです。
60歳でした。
若すぎる死です。
このニュースを聞いた時、
私はふっとパンチョンラマのことを思い出しました。
西宮大使の急死と中国政府との間に
なんの関係もないとは思いますが、
なにやら背筋が凍る思いがしました。
「24」の見すぎかな・・・・
ちょっと恐ろしくなりました。
亡くなられた西宮さんのご冥福をお祈りいたします。
おしまい。
|