先日エンジン不調で入庫したXJR1200(4KG2)。
入庫したときにガソリンタンクがウレタンコーティングされていて、
それが微妙に剥離していたのには気が付いていたわけですが、
ガソリンタンク内側のウレタンを完全に除去することは
物理的に不可能ですので、
紙タイプのフューエルフィルターを
ガソリンコックとキャブレターの間の追加しました。
また
フューエルコックはお客様が既に交換済みで
新品が付いていましたので
①フューエルコック部のストレーナー
②追加したフューエルフィルター
③フロートバルブ受け側に付いている半円状のストレーナー
3重でガソリンが濾過れますので、
ウレタンのゴミがキャブに落ちるリスクは少ない。
キャブをオーバーホールして、
段つきしていたフロートバルブを交換。
50000キロ近く走っていたエンジンですが、
すばらしく調子が良い。
いやー、このエンジンはいけてるわぁ
と、
自信満々で出荷したわけですが、
お店からご自宅まで30キロほど走る途中
もうホント自宅の500m手前でエンジンが止まった、と
???
そんな、あんなに調子が良かったのに、何でだ!!
その日のうちに引上げ。
ご自宅では何とかエンジンがかかりました。
確かの調子が悪い。
なんかガス欠的な症状。
でもガソリンは入っている。
お店に持ち帰って診断。
なんと、タンクからのガソリン流量が少ない。
っていうか、ほとんどガソリンが落ちない。
コックをプライマリーにしてもチョロチョロと
頼りなくガソリンが出るくらい。
コックは明らかに新品ですが、
取り外して分解。
コック内部にはウレタンのゴミの侵入はありませんでした。
ガソリンキャップのエアーバルブが不良で
ガソリンが落ちなくなるときがありますが、
ガソリンキャップを開放しても症状は一緒。
コックを外してガソリンが落ちるか確認すると
勢い良くガンガンでます。
ま、そりゃそうですね。
一応ガソリンコックを分解して清掃。
再度タンクに取り付けると、
普通にガソリンが出るようになりました。
目視では分かりませんでしたが、
何かゴミが詰まっていたのかな??
その後組み付けてテストラン。
お客様が30キロ走って止まると言うなら
50キロ走ってみようと、
一応工具を背負って夜中の12時にお店を出発。
海老名に出てR246を横浜方面へ
その後保土ヶ谷バイパスに乗って、新桜ヶ丘インターでUターン。
下川井で降りて、中原街道でお店へ。
とっても快調。
やはりコックに何かが詰まっていた可能性が高い。
50キロ入って症状が出ませんので問題なし。
翌日再度出荷。
すると今度は大和付近で止まったと。。。。
三度引上げ。
もしかしてまたガソリンが落ちてないのでは??
お店に戻ってお客様と共に確認作業。
やはりプライマリーにしてもチョロチョロとしか
ガソリンが落ちません。
うーん、とっても不思議。
ためしにフューエルコック部のストレーナーを外して
タンクに取り付け、プライマリーにすると
勢いよくガソリンが出ます。
ま、本来これくらいガソリンが出てきて欲しい。
しかし、ストレーナーを取り付けるとガソリンが出ない。
よーーーーーーーーくストレーナーを見ると
なんとなく白茶けている。
実験で排出したガソリンの受け皿の底には
色っぽい粉と言うか粒子が沈んでいました。
原因はストレーナーにこの細かい粒子が付着して
完全にストレーナーが塞がれてしまうことで
ガソリンが落ちなくなる、と言うものでした。
粒子状物質の正体はウレタンです。
ウレタンの細かい粒子がコロイドのようにガソリンの中に浮遊していて、
フューエルコックのストレーナー全面を塞いでしまう。
私がコックを清掃してから60キロでNG
1回目の出荷時はコックは清掃していませんから
30キロでNGになった。
1回目の出荷時に新しい紙タイプのフューエルフィルターを
取り付けたわけですが、
よく見ると、フィルター底部に結構な量のウレタンが見えます。
わずか90キロほどの走行でこれだけのウレタンが落ちたことになります。
解決策
①ガソリンタンクを新品に交換する
②再度ウレタンコーティングを試みる
③中古タンクをヤフオクで落とす
①が一番確実
でも新品タンクは70000円!!高いです。
③もヤフオクで探してみましたが
なかなか良いタンクがない。
あってもサビサビかへこんでいたり、色違い・・・
②は既にあるウレタンコーティングの上から
さらにウレタンをコーティングするわけですが、
ガソリンがしみたウレタンの上にさらにウレタンが載るのか不明。
タンクの信頼性は低い。
少しの時間は持つかもしれませんが
また同じようなトラブルになる可能性がある。
2週間間をおいて
その間にヤフオクを検索。
良いものが出れば中古タンク。
なければ新品!!
ということになりました。
結局①の解決策を採りました。
新品タンクは非常に高いですが、
信頼性という意味で一番良い。
最初に入庫したときに新品タンクへの交換を
進めるべきだったのかもしれませんが、
そうすると金額的に相当高くなる。
最初の判断が間違っていたとは思いませんが、
結果的にお客様にご迷惑をかけてしまった・・・・
深く反省。。。。。
どこまでの完成度を求めるか?
いつも悩むところです。
整備士としての意見と
経済的な意見との駆け引き。
なかなか難しい。
この辺はやはりお客様とのコミュニケーションが重要ですね。
しっかりとした打ち合わせが大切です。
お客様がとこまでの整備を望まれているか
これを感じ取るのも整備士のお仕事。
いやー、整備業って奥が深いです。
本当にご迷惑をおかけしました。。。。
日々精進!!
PS
ウレタンコーティングは最後の延命手段。
ガソリンタンクが錆びたら基本きっちりサビを落とし
万が一ピンホールくらいの穴が開いたら
フラックスを塗って板金半田で穴を塞ぐのが良いと思います。
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