一昨日の話ですが、
「輸出戻し税」なるお話をラジオでしていました。
この輸出もどし税なるおかげで
大手輸出企業はなんと消費税を納めていない、
というお話でした。
消費税は広く均等に税負担をするものだとばかり
思っていたのですが、大手輸出企業は消費税を払っていません。
最初この話を聞いたときは、ちょっとびっくりしました。
しかし、
よくよく考えると、
消費税は最終消費者が納める税金ですし、
輸出する場合は消費税を輸出先の国から取るわけにはいきません。
輸出国の税制が適応されるからです。
大手輸出企業であるT社やN社、S社など、
超有名な大手輸出企業は
国内販売も当然していますが、
その大部分は輸出していますので、
消費税を納めるどころか
なんと一円も払っていません。
むしろ、還付金として国から逆にお金をもらっている。
数千億円という単位で税金が還付されているようです。
こりゃけしからん。
今後消費税率が10%になると、
単純計算輸出もどし税の金額は倍となり、
大手企業だけが儲かって、一般庶民は苦しむことになる。
という感じの論調でした。
ラジオを聞いているときは私も「こんな問題があったのか!」と
少々怒りぎみだったわけですが、
じーーーーっくり考えてみると
輸出もどし税という制度自体には何の矛盾もありません。
例えば大手企業Tが100万円の部品を仕入れたとき
消費税が加算されてTは105万円仕入先に払います。
その部品を加工して、例えば300万円で売るとします。
国内で販売する場合は5%の消費税が加算されて
315万円で販売します。
Tは既に5万円分の消費税相当額を払ってるわけですから、
最終消費者からもらった15万円の消費税から5万円引いて
10万円を消費税として国に納めるわけです。
しかし、これが輸出される場合は話が違います。
外国から消費税を取ることは出来ません。
消費税はあくまで最終消費者が支払う付加価値税ですし、
外国に輸出された製品は外国の税制が適応されるわけです。
したがって、
300万円で外国に売ることになります。
Tは既に5万円の消費税分を払っているわけですから、
その分が国から還付されるわけです。
税金で儲かっているように思ってしまいますが、
既に払っている税金がもどってきたというだけです。
ラジオでは消費税率が上がると大手企業だけが儲かって
中小は苦しむことになり、その原因は輸出戻し税にある、
という論調でしたが、
輸出戻し税という制度自体にはなんら問題はないと思います。
問題は中小・下請けがコストダウンを強要され
実際には消費税増税分を大手企業から取れない、
という点にあります。
いつの世も大手よりも中小・下請けは立場が弱いわけですから、
価格を上げると、大手に切られてしまうリスクが伴います。
大手企業とのパイプが切られたら、
中小・下請けはあっという間に倒産です。
結局増税分のツケは中小・下請けが持つことになる。
つまり、結果的に消費税が増税されると
大手輸出企業は税負担しないが、
中小・下請けは負担を強要される
ことになるわけです。
大手輸出企業が増税分をしっかり中小下請けに払っているなら
輸出戻し税自体になんら問題はありませんが、
現実に増税で苦しむのは中小下請けになるわけです。
値上げ分を請求できなし中小・下請けと
値下げを強要する大手企業との間の問題です。
消費税(付加価値税)自体にはこのように
輸出企業を援助する効果があるわけです。
法人税を下げて、消費税を上げる。
輸出大国の日本がグローバル化された世界で
生き抜いていく1つの方法です。
モノを作って輸出して儲けている国として
日本・韓国・ドイツを2011年度のデータで比較してみると
日本 法人税40.69% 付加価値税(消費税)5%
韓国 法人税24.20% 付加価値税10%
ドイツ 法人税29.38% 付加価値税19%
となっています。
輸出すれば、付加価値税は戻ってくるわけですから、
法人税から付加価値税を引くと
日本 35.69%
韓国 14.20%
ドイツ 10.38%
という税負担となります。
この3国が同じような製品を同じような品質で作ったとしても、
税制上不利な日本は製品価格を他国に比べて下げずらい。
つまり国際競争力が低くなってしまいます。
今、政府が消費税増税でやろうとしていることは、
不足する財源確保という側面以外に、
大手輸出企業が世界と対等に戦っていける
土体作りという側面もあるのだと思います。
今、日本にとってT社もN社もS社もP社も
潰れてもらっては困ります。
まだ体力のあるこうした大手輸出企業に
日本の残った力を集約しなければ、
世界と対等に戦えない、
そこまで立ち行かない状況にまで追い詰められている、
ということなんだと思います。
さらにTPP参加と合わせて得意分野に特化することで
生き残っていこうという戦略です。
しかし、得意分野に力を集約するツケは
弱者が背負わなければいけません。
例え赤字でも売り上げに対して消費税は掛かりますので、
消費税増税は中小下請けに重くのしかかります。
多くの企業が倒産することになるでしょう。
政府は「それもやむなし」とは決して言いませんが、
現実問題、弱者切り捨てられる、ということです。
年金問題にしても、
現在年金をもらいすぎているところには手を付けず、
払っている人の負担は増えております。
これは、団塊世代のほうが、圧倒的に数が多いのと
若い世代の政治参加率が低いので
政治家も年寄りに優しく成らざるを得ません。
長期的な問題を民主主義が乗り越えずらいという
根本的な構造欠陥を民主主義が内包しているのかもしれませんが、
数としての強者と弱者という分類からすると、
ここでも弱者は切り捨てられているわけです。
なんとなくですが、
弱者切捨てに全体が動いているように思えます。
力を集約すれば、勝てるチャンスは増えますが、
リスクヘッジが出来なくなる。
若い世代が新しい分野で活躍できるチャンスがある社会も
大手企業に力を集約することと合わせて整備していかないと、
大手がこけたとき、日本全体がこけてしまいます。
若い世代が萎縮せずに
チャンスに飛び込んでいける後押し政策も
しっかり考えておかないといけません。
「輸出戻し税」
いやー、初めて知りました。
びっくりびっくり。
おしまい。
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