昨日、阿部総理がTPP参加表明をしましね。
オバマさんとの会合でもTPP参加の同意は得られているわけですが、
アメリカ議会の通過に最低90日掛かるようですから、
実際にTPPの会議に参加できるのは6月以降ということになります。
政府・大手マスコミ・経団連などは基本的にTPP推進派ですね。
翻って、農業関係、特に農協などは大反対をしています。
賛成・反対それぞれありますが、
ちょっと基本的な議論があまりにもないような気がします。
TPPに参加することのメリット・デメリット
いろいろあるとは思いますが、
よく言われるのはメリットは耐久消費財(自動車・家電など)の
輸出が伸びて利益が上がる。
一方、安い農産物などが入ってくることで
日本の農業がダメになる。
と、大体このくらいの論点しかニュースになっていません。
メリット・デメリットを差し引きして
全体としてどれだけ日本が儲かるか?
つまり日本人の所得が増えるかが
一番の問題だと思うわけですが、
全日本人の総所得、つまり名目GDPが上がるのであれば、
TPPに参加するべきですし、
GDPが下がるようであれば、参加すべきではありません。
答えは至極簡単です。
先日政府の出した試算によると
GDPを3.2兆円押し上げると言っています。
参加推進派である政府が出した試算ですので、
GDPが押し下がる結果を出すはずがありませから
ま、希望的観測では押しあがる可能性がある、
程度に思っていたほうが良いと思います。
日本の名目GDPは約6兆ドル(2012年)
そのうち輸出で儲けているのは11%弱
89%は内需で回っているお金と言うことですね。
この内、
輸出に占める耐久消費財は全体のたったの1.65%足らずです。
ここが多少伸びる可能性があるわけですが、
アメリカは関税の聖域として自動車やトラックを掲げていますので、
日本の自動車がTPP参加によってアメリカで拡販できる可能性は
残念ながら低い。
オーストラリアやカナダ・NZなどでは
拡販できるようになる可能性もありますが、
そもそも人口が少ないので、
それほど多くの拡販は期待できません。
本当にTPPに参加することで
日本のメリットはあるのか?
考えれば考えるほど分からなくなってきます。
大手マスコミがTPP参加推進派となっているのは
スポンサーが大手輸出企業という背景がありますので、
やや偏っているとみて良いでしょう。
自動車関連の企業はTPPに参加することで
販路が広がりますので、当然です。
一生懸命メリットを探し出そうとしていますが、
耐久消費財の輸出が伸びそうだなぁという以外は
どうもメリットが思い浮かびません。
先にも述べましたが、
名目GDP全体に占める耐久消費財の輸出はたったの1.6%です。
これが、20%くらいまで上がるのであればまぁ良いのですが、
アメリカが聖域として自動車を上げている以上
それほど大きな伸びはまずありえない。
上がってもせいぜい2%程度でしょう。
このわずかなメリットを生み出すダメに
どれくらいのデメリットがあるのか?
最近よくTPPについて考えますが、
どうもデメリットはいっぱい思いつきますが、
メリットが上記の耐久消費財の輸出がわずかに伸びるかも
ということ以外思いつきません。
最近株価も上がって、円安方向に触れていますが、
これは政権が自民党に変わり、
デフレ対策として、公共事業を増やし、
金融を緩和していくという期待感からです。
デフレというのはご存知のように
供給が多くて需要が少ないことです。
モノがどんどん安くなっていくので、
使わないほうが得だから、皆お金を使いません。
お金を持っていると、その価値が上がる。
今日1000円で牛丼が3杯食べれる価値があったとすると
明日は同じ1000円で4杯食べれるようになる。
これがデフレです。
この状況を脱却することが日本にとって最優先なわけですが、
そのために阿部さんは公共事情をガンガン増やして
内需を増やし、お金をバンバン刷って
お金の価値を下げる金融緩和をするわけです。
これはすごく理にかなっているのですが、
TPPに参加すると、安い農産物がどんどん入ってきますので、
食料品の価格が下がる可能性があります。
TPPに参加することはデフレ対策としては
むしろ逆効果となる可能性を秘めています。
インフレの時は
規制を緩和し
小さい政府をめざし、
金融を引き締める
デフレの時は
規制を強化し
大きな政府をめざし
金融を緩和する。
これが基本になるはずです。
農産物に関しては政府が守るといっていますが、
どこまで守れるかは疑問です。
TPPは基本関税の撤廃です。
聖域を作ったとしても、5年、10年、
何年先かは分かりませんが、
いずれかならず撤廃される。
若しくはISD条項で裁判に負け、
高い賠償金が結局税金で払われる。
今日、自民党の石破茂幹事長が
米などの農産品、重要5品目の関税引き下げも
ありうると発言していましたね。
規制もどんどんなくなっていくので、
遺伝子組み換え食品などの表示も撤廃され、
世界に誇る日本の食品安全性も下がるでしょう。
「国家100年の敬」
「今、TPPに参加しないと、日本は世界に乗り遅れる」
といっているわけですが、
TPPに乗らなくても
日本はASEANプラス6の貿易圏構想があるので、
むしろ乗り遅れているのはアメリカのほうで、
無理して今、慌てて参加しなくても良い気もします。
ものすごく悪い例かもしれませんが、
昔昔はやったシュミレーションゲーム
「信永の野望」。知ってます??
自国の領土を守るために、
非常に重要になってくるのが、
自国の食料自給率。
ここが確保されていないと一揆が起きて
とても全国制覇などしている場合ではありません。
自国の食料を確保して始めて外部に攻め込んでいけるわけです。
現在日本の食糧自給率は
カロリーベースで約40パーセント。
穀物に関してはたったの28%
このうち小麦は14%、大豆は5%、とうもろこしは0%
ほとんどの穀物を輸入に頼っているわけですが、
主要先進国で同じ工業国である
ドイツ、フランスなどは
食料自給率は低いものの、
穀物に関しては100%を守っています。
米・小麦・大豆が国の安全保障上
非常に重要だからです。
食料自給率が100%を超えているアメリカやオーストラリアなどで
もし大干ばつが起きて100%を切ったら、
米や小麦・大豆といった穀物の価格は一気に跳ね上がります。
世界的な水不足や農地不足、人口爆発など
食料や水が近い将来足りなくなる可能性は極めて高い。
そんな時、食料輸出国はまず自国を守ります。
ま、当然と言えば当然です。
輸出なんかしません。
したとしても、そうとう高く売りつけてくるでしょう。
米・小麦・大豆、こうした穀物の自給率というのは国力であり、
外交を有利に進める武器としてのカードになるわけです。
それが現在の日本はたったの28%です。
今はまだ関税で守られていますが、
TPPに参加すれば、いずれ関税は撤廃される。
TPPに参加するのであれば、
穀物自給率がこれ以上下がらないように
大規模な改革が必須です。
これはTPP参加・不参加の議論よりも
もっと根子にある国の安全保障の問題に直結する
重要な問題です。
TPPはアメリカ主導で進められて、
阿部さんとオバマさんの間で既に参加合意を約束している。
日本政府も昨日正式に参加表明を発表していますし、
大手マスコミも基本的には推進派ですので、
世論も賛成に流れていくと思います。
TPPについて考えれば考えるほど、
TPPってそもそもなんだろう?とか
参加することのメリットが少ないのでは?
など、疑問が絶えない。
だれても良いので、TPP参加による
メリットを詳しく教えてもらいたいです。
問題として取り上げられる農産品は
TPPの24項目の1つでしかありません。
あと23項目も問題があるわけです。
分からんことが多すぎるわ。
本当にTPPのことを理解するには
相当勉強が必要な気がします。
池上さんの番組とかやってくれないものかしらん?
おしまい。
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