65歳以上の先輩方は
まさに敗戦直後の悲惨な日本を生き抜いてきた。
ないないずくしの世界の中で、
最も大切なことは生き抜くこと。
具体的には「食べること」でした。
アンパンマンの作者故やないたかしさんは
お腹を空かせた子供たちのために、
お腹いっぱい食べ物を与えるヒーローを作り上げました。
故田中角栄さんは
どんなに大切な話でも
「まず食事だ、話はそのあとだ」
とよく言っていたそうです。
65歳以上の先輩方の価値観の中心には
常に「生きぬくこと」＝「食べること」が
何よりも大切だったんだろうと思います。
そういった過酷な社会で生き抜いてきた。
その後日本は一気に高度経済成長期を迎えます。
何もなかった日本には
全ての物が必要でした。
テレビ、冷蔵庫、エアコン
今では当たり前のようにあるこれら家電は
３C、3種の神器と言われ、
作れば作るほど売れる時代でした。
真面目でウソをつかず、
とにかく一生懸命働いた結果、
日本は世界1位の品質を持った製品を
次々に世に送り出し、
Japan as NO 1と言わしめるまでになった。
働いて働いて働いて、働きまくった。
「24時間はたらけますか♪」というCMもありましたね。
35歳～65歳くらいまでの人にとって、
人生の価値観の中心はまさに「仕事」でした。
そして現代。
食で困る人は例外を除いてほとんどいません。
テレビも冷蔵庫もエアコンも車も、
パソコンもタブレットもスマホだって
なんだってある。
雨風の当たらない住居だってある。
蛇口をひねれば、普通に水が出て、
24時間いつでも
暖かいシャワーだって浴びることができます。
35歳以下の方々にとってみれば、
食べるもののためにだけに
自分の人生の大切な時間を使うことはまずありません。
食べ物は世の中にあふれています。
テレビや冷蔵庫や車を買うことに
それほど興味もありません。
だって、もう持っているから、
自分の人生の大切な時間を使って
それらガジェットを得ようとは思いません。
衣食住のためでもなく、
もはやお金のためでもなく、
「何のために働くのか」を模索しているのが、
現代の若者の姿なんだろうと思います。
戦後→復興期→高度成長期→バブル期→デフレ期
社会が成熟していく過程で、
人間の価値観もまた進化しています。
戦後間際、
「俺は、私は、何のために働くのか？」
とてもそんなことを考えている余裕はありません。
食べることに必死な社会でした。
高度成長期
「俺は、私は、何のために働くのか？」
考えている余裕はありませんでした。
日本を豊かにするために
皆必至で働き続けました。
そして現在
「何のために働くのか？」
を人々が問い始めたんだろうと思います。
特に東日本大震災という大きな災害を経験して、
日本人の多くは
さらに一歩高みに上がったんだろうと思います。
「何のために働くのか？」
人間生きてもせいぜい100年です。
食べ物も、お金も、名誉も地位も、
死んだら全て消えてなくなります。
あの世へも持っていくことはできません。
この世の中に残り続けるのは、
自分のことではなく、
誰かのために行った「何か」だけです。
パートナーのため、
子供たちのため
愛する妻のため、
地域社会のため
日本のため
世界のため
自分がそのために役に立っているという自負
「人のために役に立っているんだ」という
心の報酬。
もう多くの日本人が
そのことに気が付き始めているんだろうと思います。
つながりや絆、SNSの登場、ボランティアの普及
価値観の変化に伴って
これらが重要視されていくのは
自明の理。
社会そのものが成熟し進化すると、
求められるものも
また同時に変化していくんだろうと思います。
今日は随想。
おしまい。
